2004年8月14日土曜日

2004/08/14 渋滞→会場へ

8月14日@Vermont

結局、昨日の晩からほとんど進展もなく夜になった。相変わらず、どの車も死んだように息をひそめてその場にじっとしていた。

車内でもさすがに疲労と空腹でみんなしゃべらない。でもやっばり「お腹すいた・・」。
すると自分からはめったにしゃべらないSちゃん、「昼間これ買ってきたんですけど・・・」と差し出したのはチェリーパイ。Sちゃんも明るいときに売店まで行っていたのだ。気がきくじゃないの。けっこうずっしり重くて腹持ちもよかった。

夜中に、隣のレーンの渋滞の列から私達のすぐ横の車が移動した。これで私達の車は左に脱出できる。とりあえず、ひとつ左へ移動する。
他の車は寝ているのか全く動かない。ここで相談。
「どうしよう、左レーンに出て渋滞抜けてみる?でもねぇ、先はわからないしねぇ」「行ってみる?」「でもな~」そんな感じで4人ともどうしても決定できない。

結局、前で渋滞している人たちも運命共同体なのだし、明日の朝考えようということになった。最悪、歩けば5.6時間だ。明日の朝の決断でもショウには間に合う。1つ先の27番出口まで行って、どこかに駐車させてもらってもいいし。もしもそれでさらにひどい渋滞にはまったら、14日のショウはあきらめよう。最終日だけでも見られればいいよということで皆納得。寝る。

04:00 目覚めて起きるが相変わらず前方の車はみんな死んでいる。

私達の車は、昨日のアイドリングでけっこうガソリンが減っていた。
私が「会場に近くなってスタンドがなくなると不安だし、とりあえず少し買っておこう」と言うと、旦那が「でも店はまだ開いてないんじゃないの?」と言った。でも、ポリタンクを抱えて私達の車の隣を何人かが歩いて過ぎて行く。私達二人はまだ店に行ったこともなかったし、食料調達と朝の散歩も兼ねてスタンドへ行ってみることにした。

外に椅子を出したままシュラフにくるまって寝ている人がいた。なぜ車で寝ないかなぁ。けっこう外は冷えるのに。

しばらく行くと、まだ早い時間なのに4人くらいで車をかこんでいる連中がいる。近付いてみると「You can do it!」と繰り返す男。その隣には針金を持った男。なんとこの車インロックをしてしまったようで、ずいぶんと長くこの状況らしい。作業は1人しかできないので、他はずっとそいつを励ましている。仲間の一人は疲れ果ててボンネットの上で寝ていた。

20分ほどで25番出口についた。ここに停まっていた渋滞の中のキャンピングカーはタープまで引き出している。まったく動く気がないんだ。やれやれ。こんな人たちの後ろにおとなしく繋がっていていいのか、また不安になる。

そこから10分ほどでガソリンスタンドについた。ガソリンはポリタンク付5ガロンで$45。べらぼうに高いが仕方ない。
他にエビアンを買う。レジの横に手作りステッカーがあったのでそれも数枚購入。
5ガロンが何リットルかわからずに買ったのだけど、20リットル近い量だった。旦那は数メートルでよろよろ。

戻る途中にフードコートがあったので食パンとコーヒーを買う。車に戻るまで旦那がずっとガソリンを持ってくれた。行きには「肌寒いなぁ」と言っていたのに、帰りは「あち~、あち~」と汗だくだった。
ガソリンを持って戻ってきた旦那にたつにぃびっくり。「これをかついでくりゃ、それはしんどいよ。本当にお疲れさま~」とねぎらってくれた。

さっそく給油。先輩3人から命令されるSちゃん。汚れ仕事を年下に押し付ける私達(笑)。
しかし、手元が危ない。Sちゃん細いしなぁ。


途中ザバザバとガソリンがこぼれる。
「こら、もったいない。しっかり持ちなさい!」と喝を入れる。
「重い・・」とSちゃん。それを聞いた旦那「俺はそれを30分も運んできたんだぞ~。」
Sちゃん、反論できず、ポリタンクをしっかり持ち直す。

どうにか給油を完了して、買ってきたパンでサンドイッチを作って食べる。うまい。


明るくなって人は車から出てきたりしていたが、車は相変わらず停止状態。


私達はすることもないので車でラジオを聞いていた。

しばらくすると外にいる人たちの様子がどうもおかしい。
女の子が「f*ck!!!!」と絶叫している。何事?!

すると、ずっと一緒だったスペイン人の彼が私達の車にやってきた。
旦那が窓をあけると、「よく聞け。これは本当の話。会場の駐車場にもう車が入れなくなった。チケットは払い戻すと今マイクがラジオで言ったんだ」と冗談を言っていた顔とは別人のシリアスな顔で言った。私達もちゃんとオフィシャルの92.1FMをかけていたのに誰もその発言には気付かなかった。

「どうしよう」。私は車を降りて、今教えてくれた彼にどうするのか聞いてみた。
彼は「わからない。たぶん車を置いて行く人が多いだろう。でも、ポリスの判断もわからないし、僕はどうしていいのかわからない」と言った。
別のアメリカ人にもどうするのかと尋ねたら、彼は一言「no idea」と言った。

私達は昨日話し合ったとおり、すでに歩く覚悟はできていた。

すぐに車を左レーンに移して前に進む。遠かった25番出口は車ではあっという間だった。私達同様前進する車もあれば、即座にUターンをしている車もいた。

本来降りる予定だった26番出口は恐らく混んでいるだろう。
私達の前方も列ができはじめている。25番を過ぎると、すでに側道に停車して歩く準備をしている車が連なっていた。私が助手席から「歩くの?」と聞くと笑顔で「そうだよ。早く車をとめたほうがいいよ」と言われた。

私はハイウェイに車を置いて行くことにとても抵抗があったのだけど、無数に並んだそこの列を見ているうちに安心した。よしっ、この際この辺に乗り捨てるしかない。
しかし、側道はどんどん停車する車で埋まっていく。

そのとき、ちょうどすぐ前の側道にいた車が本線に車を出したのだ。あそこしかない。運転しているTに「あの場所、ほらっ」と言って急かす。狭いスペースながらも、Tがきっちり駐車してくれた。私が運転席にいなくてよかった。

早速車に置いていくものと持っていくものをわける。といっても私のバックはカートになっていたので、ほとんどそのまま持って行くことにした。旦那はショルダーのスポーツバック。かなり減らしたものの、テントが入っているので重量はそうとうなもの。
Sちゃんもカート付の旅行バック。Tはスポーツバックから必要な荷物だけをリュックに詰め替えた。
空港を出発してから35時間。やっと車から離れることができた。


10:00 いざ出発。

きっととてつもない距離を歩くのだろうが、今からなら絶対に今夜のショウには間に合う。自分の足が一番信用できる。
しかし20マイル以上あると聞いても、とっさにキロで距離がわからないところがいい。



歩き始めてすぐに、アメリカ人らしき若い女の子に「You are crazy!」と言われたので、私はにっこり笑って「Yes!」と答えた。彼女も笑っていた。だって彼女も今から歩くのだから。
なんだかわからないけれど、私はこの状況がとても楽しかった。普段から歩くのは好きだし、天気もいいし、景色もいい。そして、こうして歩けばPHISHに会える。しかもカ-ト付荷物は重さをあまり感じない。









1時間ほど歩いたところで、警察がここでハイウェイを封鎖して、
ここまで来た車両はすべてsouthのレーンにUターンさせていた。
それを見て、ここまで車で来なくてよかったとホッとする。きっとすべての選択がいい方向に向いているのだ。
しかし、警察官は普通にでかい銃なんか持っていてかなり恐いんだけど・・。



ずっと見たかった26番出口に到着。
車の降り口は右側だけど、車ではないのでみんな左へショートカット。southレーンを普通にぞろぞろと横断して、ハイウェイの芝の傾斜を下って進む。ここから5号線に入る。


5号も車が長い列をなしている。これじゃ、ハイウェイと合流なんてできるわけないわ。
ちょうど5号を歩き始めた人たちが、ハイウェイから降りて来た私達の流れを見て盛り上がる。みんななんとなく変な団結感ができていた。
5号で渋滞にはまった車はかえって中途半端で悲惨だった。前にも進まないが乗り捨てもできない。停止したままの車から、横を歩いて通り過ぎて行く人たちをただ見ているしかない。どの道を選んでも、それぞれにいろいろ違った苦労をしているのだと思った。

窓にはGotta Jibbooの文字。彼らはこの晩この曲を聞けているといいのだけど。


道沿いには、地元の方がいろんなお店を出してファンを歓迎していました。


5号に入って少し歩いたところで、日本人の女の子を追い越したので「こんにちは」と声をかけた。彼女は笑顔でかえしてくれたけれど、とても辛そうだった。

聞いてみると、昨日の晩バ-リントン空港に到着し、そのまま車を飛ばしてきたものの渋滞にはまり、朝のラジオを聞いて5号に車を捨てて来たそうだ。ほんんど寝ていないだろうし、それはしんどいだろう。同じグループの男の子も「もう泣きそうっすよ」と言っていた。彼らもめげずに無事に着いていてほしい。

途中で旦那が来ないので待っていたら、渋滞にはまっている日本人を見かけて話をしてきたということだった。やっぱり今回は日本人が多い。彼らも会場まで着いたのかな。

旦那はかなりへばってきていた。「荷物交換するよ」と言っても「いや、いい」と言い続けた。所詮私が持ったところで、たいして進めないだろうけれど。旦那曰く「帰りのために元気な奴を残しておかないと」ということだ。一応やさしさだと受け止めておくことにした。

だいたい3時間くらい歩いたところだと思う。顔はやや疲れ気味。
イメージよりも5号に入ってからが遠かったからなぁ。上り坂だし。




途中の売店でノドを潤す。よく冷えたジュースが体に染み渡っていく。この売店の若いお姉ちゃんが「CD持って行く?」とすぐ横にあった小さな段ボールを指さした。その箱にはマジックで"free CD"とある。何の音かよく見なかったけれど、せっかくフリーだし「Thank you!」と言ってもらってきた。
それは"YONDER MOUNTAIN STRING BAND"の09/21/03だった。どうも9月に発売されるCDの宣伝用のようだ。←シャレじゃないですよ。
こういうことも歩けばこその出来事でうれしかった。

途中の売店ではちょっと変なTシャツも売っていたのでそれも買った。会場ではこのTシャツを売っているのはみかけなかったな。


5号からエアポートへのショートカット。
草原にはすでに先を歩いた人たちのおかげですっかりケモノ道が出来上がっていた。
しかし、カートの私とSちゃんにはつらい道。荷物を抱えて歩く。


ここから先は砂埃の舞う、農道に入った。そして繰り返すアップダウン。長~い上り坂をやっとの思いで超えると、また正面に同じくらいの上り坂が見える。延々これの繰り返し。一山ごとに「この山を超えたらそろそろかな」と考えるが、うらぎられ続けた。

とうもろこし畑の続くのどかな風景が続く。空は快晴。風も心地よい。
だいぶこの風に助けられている。ただ、おまけにけっこうな砂埃もたてるけれど。




牛も驚いて歩く人たちを見ていた。こんなに大勢の人を見たのはきっと初めてだろう。


Tが「しぼりたて牛乳とか売ってないかな?」と言う。
「普段はこの道をこんなに人が行き交うことはないだろうし、まちがいなく牛乳は売ってないだろうねぇ」と話した。
だいたい、今しぼりたての生暖かいミルクは飲みたくないけどなぁ。Tっておもしろい。

COVENTRYのイメージが牛というのがわかる気がした。道中では放牧されている牛も見かけた。

歩いている途中で、「こんにちは」と話し掛けられた。見るとアメリカ人。
つい先日まで四国に2年ほど住んでいたということで、とても自然な日本語だった。もう15回もPHISHのショウを見ているそうだ。彼といろいろと話をしながら歩いた。

私達の歩いている横を、人を乗せたトラックが何度か通り過ぎる。地元の人がピックアップしてくれているようだ。狭い荷台に10人以上がぎゅうぎゅうになって乗っているのだけど、もうとにかくそれに乗りたかった。
タイミングよく、私達もトラックを拾うことができた。料金は1人$5。あとどのくらいの距離かわからないけど、安いもんだ。四国に住んでいた彼も一緒に乗った。
10分ほどで降ろされたが、その道中を車上から眺めていて、車を拾ったことが正解だったとわかった。この道のりが$5なんて本当に安かった。車でふたやまは超えたと思う。

2つ目の山を超えたときにテントサイトが見えて、車に乗っていたみんなで拍手をした。
ついにここまで辿り着いたのだ。
時計を見ると14時を過ぎたところ。まだまだ余裕がある。


降ろされたところは、ステージエリアのすぐ脇だった。
まだゲートは開けていないのでガランと広い土地が広がり、遠くに小さくステージが見えた。



ステージを右に見ながら、前の人の列に続いた。
今度は人の渋滞。ほとんど前に進まない。一体どうなっているのか。


左側にはテントサイトが広がり、柵の向こうからこちらの列に手を振っている。
いいなぁ。彼らはもう会場の中にいる。
柵の向こうとこちらでは天国と地獄だね。というものの、地獄というほどひどくはないけれど。だって今現実にここにいるのだから。もうしばらくすれば私も柵の向こう側なんだ。

それにしても列が動かない。あっという間に15時になっていた。途中に、段ボールが積まれていて、中に何か書類のようなものが入っている。
その場所まで遠かったのだけど、なんとか人込みをかき分けて手にする。中を見る間がないので、とりあえず片手につかめるだけ持ってきた。

みんなのところに戻って広げるとサイトマップだった。これでやっと自分達の居場所がわかった。わざわざ取りにいった甲斐があった。地図によるとゲートは間もなくだった。

四国に住んでいた彼と結局ここまで一緒だった。彼に私のチケットがWillCallなんだと話しをしたら、「あのWillCallの看板の出ている窓口にいけば大丈夫」と教えてくれた。このまま真横につっきればすぐなのに。

ゲート付近で係の女性が拡声器で怒鳴っている。どうやら、「徒歩用のレーンをはみでないように」と指示しているようだった。しかし、そのレーンがものすごく狭い。この人の渋滞はそのせいだとわかった。歩いている人はみんなブーイングを始めた。こんなことをしていたらショウに間に合わないかもしれない。みんな同じ心境だ。

私はどうせ先にWilLcall窓口に行かなくてはいけないので、人込みの右手を大回りして前に進んだ。折り返し地点まで着くと急に人の流れがよくなった。結局運営側は車の入場レーンを一旦止めて、人のためにすべてのゲートをオープンした。これで一気に人の流れはよくなった。

入場ゲート。


WillCallは10人ちょっと並んでいた。初めてで緊張していたものの、オーダーをプリントアウトしたものと、パスポート、クレジットカードを渡したらすぐにチケットを渡された。

チケットはなんとオフィシャルと同じたんぽぽの絵柄のチケットだった。うれしい。










やっとブルーの腕輪装着。これだけでちょっと泣きそうになる。
あきらめなくてよかった。時刻はすでに16時近い。いよいよ中へ。

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