2018年10月21日日曜日

2018/10/21 Hampton Night 3

このショウの間にいろんなことがありすぎて(個人的に)、壮大な妄想ストーリーになっています。。。
"この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。"
と前置きしておきます。

長文を読むのが面倒な方、この手の話題が嫌いな方向けの簡略版はこれ。なんとなく読めるかと。妄想につきあってみるかという方は先をどうぞ(笑)


ショウの始まる少し前に、ちょっとしたものを頂いて、海外にいるし友だちもいるしという油断と、どんなもんかなーという好奇心から、軽い気持ちでいまだかつて試したことのないものをぽいと口に放り込んだ。


ショウが始まってたぶん10分もしないくらいだと思う。
なんか体調がおかしいなと感じる。寒くないのに身体が震えてくる。ちょっと鼓動も早くなって動悸みたいな感覚。
そのうちに、尋常じゃないくらいに足がガクガクと震えてきた。ひざが笑うというくらいにガクガクしている。ちょっと立っているのがしんどくなる。

「さっきのやつだ」と思いあたり、口から吐き出した。が、すでに遅い。
どんどん具合が悪くなり、目がまわるような感覚になる。
全然曲が入ってこない。それどころではないくらい身体がおかしい。

猛烈な吐き気に襲われるが、フロアにいるし、静かな曲のBrian and Robertなので、飲み込むようにして我慢。
でもいよいよ我慢できなくなってきた。フラフラしていつ気絶してもおかしくないなと自分で思った。

念のため友達に「ごめん。無理っぽい。倒れるかもしれない。」と予告。
Timberのイントロが始まったときに、もうなんかアフリカとかの呪術みたいにしか聞こえない。どんどん恐ろしい状況になっている気がして、一瞬目の前がフッと暗くなった直後、ほとんど噴水のような形で一気に吐いてしまった。

幸い、食事は昼のパンダエクスプレスでとって以来食べ物は口にしていなかったので、吐いたのは水とビールだけだった。
前にいた女性に思いきりかかってしまったのだが、自分が非常事態すぎてちゃんと謝ることもできない。

ギリギリ気絶しないで保ったことに、自分で少しだけ安心する。しかし、Timberのドラムがすさまじい低音で脳みそ全体に響いてくる。目を開けているのがしんどいくらいにくらくらして立っているのがつらい。

Sが私の異常に気づき、付き添ってくれるというので、一度フロアから離れることにした。
Sの肩にほとんどのしかかるような形で、引きずられるようにSimpleを背後に聞きながら、フロアから出た。

まだショウが始まってたいして時間が経っていないので、飲み物を買うようなファンはロビーには全くいない。

しかし、警備員と警察官がぐっちゃりいる。
理由はよくわからないのだけど、このハンプトンコロシアムは、外にも中にも警察官だらけなのだ。これは事前にアメリカ人から聞いていたけれど、想像を超えるものだった。
まあ雰囲気はピリピリして物々しいというものではなく、ただ大勢が暇を持て余してプラプラうろうろしているだけなんだけど。

で、誰もいないロビーにフラフラの私がSに支えられて出てきたものだから、暇そうにしていた警官がいっせいに集まってきて、口々に大丈夫なのかと聞いてきた。
「やばいな。これちょっとしっかりして見せないと、医務室から病院送りにされると面倒だ。酒に酔った感じでがんばってみよう」と心の中で思う。
Sも同様に思ったようで「彼女はちょっと飲みすぎただけだ。トイレに行きたいと行ってるから大丈夫大丈夫。」と言って、私をつれて警官の間を抜けた。

その場所から離れてトイレの方向へ向かってしばらく歩き、警官たちもこない、人のいないエリアで階段の手すりを見つけて、ひとまずそこにとどまった。
「私はいま他の人からは泥酔しているように見えるのかなあ」と考えながらも、耳のそばで爆音が鳴り響き、低音が全身に響き、すべてにエコーがかかっている状態で、視界はというと、目の前の床が荒波のごとくぐにゃぐにゃに波打っていて、足は相変わらず膝がわらっていて、必死になって階段のてすりにつかまって、身体を預けていないと本当に立っていることができない。
まるでがけっぷちに立っているような感じで、とにかく崩れ落ちないように手に力をいれて必死に手すりをつかんでいた。
Sに「床はどんな感じに見えるの?」と言われたので、「格子状のタイルの縦線と横線がくっついたり離れたりしながら、さらに空飛ぶじゅうたんみたいに表面がうねうねしている状態」と答えた。
Sは「みんないっしょだから大丈夫。」といった。海外で何度かショウを見ているSは、私のような状態になった人を過去にも介抱しているそうで、この言葉が一番bad状態の人を安心させる常套句なのだと後で教えてもらった。
たしかに、自分の状態が自分でもわけがわからないだけに、これを理解してくれてるのかはともかく、少し安心した記憶はある。

後で音源を聞くとこのときのSimpleのジャムがなかなかのダーク系のぐにゃぐにゃを演奏していて、私のbad状態に拍車をかけていたと思う。
ハンプトンはドリンクやトイレのあるエリアでも音が聞こえるのだ。

Sが、「まわりからは普通な人に見えてるから大丈夫。ちょっと休んで落ち着こう」と隣で話しかけてくれる。
私は自分の状態が不安で、このまま元に戻らなかったらどうしようと考えて落ち込む。
かなり喉が渇くので、Sに水を買ってきてもらった。500ml程度のペットボトルなのだけど、それを一気飲みしてしまうくらい喉が渇く。

で、飲み終わって数分もしないうちに、猛烈な吐き気がやってきてその場で今飲んだ水をだーっと全部戻してしまう。水しかでてこない。
そしてまた喉が渇いてまた水を買ってもらう。そして吐き気。

ふとロビーのかたすみに掃除道具があるのが目に入り、なぜか私が「あそこなら吐いても大丈夫そうだからあそこに行こう」とSに言い、わざわざそこまで行く。そこには箒とちりとりがあった。
なぜか私はちりとりを見たら安心して「ここならいいよね」と言って、そのちりとりにむかって今飲んだ水をまた全部吐いた。

私の奇行につきあってくれたSも、ちょっとそれはヤバイと思って、「まゆちゃん、ちょっとあっちに移動しよう」と言って、私の腕を引いて、会場の後方に回るような位置まで移動した。

たしかハンプトンは、会場内と、売店やトイレがあるところのエリアの仕切りの扉を閉めていない。暗幕があるんだけど、私が居た場所は幕は開けてあり横に寄せてあった。
出入り口付近に行くと、演奏の音がしっかり聞こえるし、中の様子も見える。
そのときに流れてきたのが、まさかのMexican Cousinだった。こんな形で伏線回収したくなかったわ。。。
この曲が聞こえた途端に猛烈に怒りが沸いてきた。そして介抱していくれているSに理不尽にくってかかる。
「ねぇ、この曲のタイトルはMexican Cousinって言うんだよ。私がパンダエクスプレスの外で聞きたいっていった曲。ねぇ、わかる、今その曲演奏してるの、そこで。私は中にいないのに!!私はこんな風にPhishを聞きたいわけじゃないのよ。普通でいいの。どうしてこんなことになってるの!ねぇ、Mexican Cousinだよっ!」といいながら子どものようにわあわあ号泣。

いまその状況を振り返ると、単なるとばっちりを受けているSに本当に申し訳ないと思うのだけど、そのときはもうどこに向けていいのかわからない怒りと不満のエネルギーがすごかった。しかもそのあとに始まったのがCamel Walkで、「ねぇ、ちょっと!!Camel Walkやってんじゃん!あー、もうどうしてこれも聞けないんだろう。あーもう。あこがれのハンプトンに来て3日目のショウの最中にいったい何やってんだろー私。」
と、自分への怒りと呆れと、フロアに復活できない絶望とで号泣してとまらず。
はたから見たら酔ってるというより、まあヤバイのやっちゃってる人だよね、どうみても。

Sがまた私をたしなめて、「普通にちょっと休んでるって感じにしてないと、またスタッフとか警官とかきちゃうから。中に戻れるようにちょっと落ち着こう。できる?」
と言うので、ああそうだった、こんなとこで泣いてるくらいなら、せめて2ndからでも復帰できるような努力をしようと思い、気持ちを落ち着けて泣くのをやめた。

吐いてるわ号泣しているわで、今自分がどんな顔をしているのか気になってきた。
じっとしていたのと時間の経過で、足の震えは最初よりは収まってきていた。床は相変わらずうねうねしていたけれど。

ちなみにこんな状態にもかかわらず、こうしてここに詳細に書けるくらいに細かいことをいろいろと覚えている。やっぱり酒で酔っている感覚とは全然違う。全体的に感覚過剰になっているような状態かもしれない。
さらに、ショウの音が聞こえている関係で、セトリとともに記憶が残っているので、とても詳しく時系列に沿って覚えているのだ。
にもかかわらず、思考はちょっとおかしくて、ちりとりに吐いたり、絶望に襲われて泣き崩れたりしている、そんな状況。

Sに「ちょっとトイレに一人で行くのに挑戦してみるよ。自分がいまどんな顔かも見たいし、荷物も確認したいし。」と言って、Sには同じ場所で待っていてもらって、一人で歩き始めた。
ちょいちょい逆フラッシュバック的に、ゆがみのないちゃんとした世界がサブリミナルみたいに入ってくる。クラクラしつつも、「ああたしかに、これは酒に酔っているようには見えなくて、ただ普通にトイレに行く人って感じなのだな」とその時々出てくる現実のときに思う。へんに演技のようなことをせず、ただまっすぐ前を見て普通の速度で歩くことを意識する。意識しないと、床のゆれが気になって及び腰で恐る恐る歩いてしまうのだ。

無事トイレに入ると誰もいなかった。
まずは個室へ。鍵をかけて便器のほうにむくと、便器はゆがんで、3方の壁はせまったり離れたりして動いていた。そして、壁の汚れや便器の傷や汚れのようなものが、虫が這い回るようにいっせいに動いていた。
この感じ何かで見たなあと考えていて「あ、これトレインスポッティングで見たのかもしれない」と思った。
「実際には何も起こっていないし、何も動いていないし、便器は触ればそこにあるんだよ」と自分に言い聞かせて、壁と便器の位置を確認してそこに存在していることに納得と安心をした。

個室から出て鏡をみたら、ワンピースがところどころ湿っていたけれど、紺色でぱっと見は目立たなかった。バッグの中身も携帯もちゃんと持っていた。
顔は青ざめているような疲労感満載の顔に、さらに泣きはらしたという状態でひどかった。コンタクトレンズが外れてほほについていたのではがして捨てた。
バッグの中に新しいコンタクトレンズを持っていたのだけれど、絶対に今この状態では装着できないと思ってあきらめた。

でも鏡をみたらかなり落ち着いた。上述のとおりボロッとしてはいるけれど、まあ異常には見えない。それにたぶんこれは抗っても何も解決しなくて、時間が経過して身体から抜けるのを待つしかないんだとあきらめと悟りの気持ちになれた。
ちょっと笑顔を作る練習などして、だいぶ落ち着いたなと思えたところでSのところに戻った。

Sが「2階から外に出られるからちょっと夜風にあたるといいよ」と言ってくれて、2人で階段を上ってテラスにでた。テラスにはまあまあ人がいた。
外は寒いけれど、耐えられないほどではなく、外の空気が気持ちよかった。周りに適度にファンがいて談笑している雰囲気も私を落ち着かせた。ここに混じっていればふつうに見えるなと思った。
柵からハイウェイを走る車を眺めたり、会場を囲む暗い水面を眺めたりして、ずいぶん落ち着いてきた。ようやく落ち着いてSにお礼を言った。そして「セットブレイクになったらフロアに戻ってみよう」ということになった。
落ち着いてきたし、外は寒いので中に戻った。
Sが「上の方なら席があいていそうだから上に登ってみよう」と提案。私は階段を長く登る自信がなかったけれど、どの程度歩けるか試してみたかったのでSと一緒に通路を登った。

階段の真ん中にある柵をしっかりつかみながら、1歩ずつ階段を登る。まだ視界がフラフラしているのでけっこう怖かった。
途中でぐったりしてしまい、そこの席の人に少し座らせてもらおうとしたのだけど、Sもうまく伝えきれていなくて、私が座ったとたんに「ここは俺の席だ。どけ!」とすごい剣幕で怒られた。私は立ち上がってとにかく上の踊り場までなんとか歩いた。

そこで壁にもたれてSと一緒にSaw It Againを見た。自分が1時間前にいた場所が遠くに見える。なんでこんなとこでこの景色を見てるんだろうなあとこの1時間のことを振り返って呆れる。
ショウに見入っていたSがぼそっと「すげーいいね。」と言ったので、「私はこんな場所で見たくなかったよ。。。」と言ってしまった。ほんとにごめんね。

ようやくセットブレイクがやってきた。私とSは長い階段をくだった。
もう一度トイレに行き、うがいをした。そしてまた水を飲んだ。
それからフロアの元の場所まで戻った。
まだ床との距離感がおかしくて、腰を下ろすのに躊躇する。Jが「ここに座って大丈夫だから」と誘導して座らせてくれた。
Jがいろいろと話しかけてきた。私にしゃべらせて落ち着かせようというのがわかったのと、私の状況を把握したかったのだろうと思ったので、聞かれるままにずっと話をしていた。
途中また吐き気がきて、Jに渡されたビニールバッグに吐いた。それはJが荷物をいれてきた巾着袋だったので、いいのかと聞いたら、「ノベルティでたくさんもらった捨ててもいいようなやつだから全然いいよ」と言ってくれた。
私のこのときの心理状態はとにかく不安と恐怖だったので、私をとがめたりせず、こういう風にさらっと言ってくれるJの配慮が本当にありがたかったし、少しずつ私の不安を解消してくれた。

Jの見立てで、2ndはこのままフロアで見て大丈夫だと思うと言ってくれた。私も、ファンの人たちの中にまぎれているほうが気持ちがとても楽で安心することができた。
近くに警官がいて後ろめたいことがあるという状況がどんどん心理的に追い込まれる状況だったのだ。
「2ndが始まったら、一度立ち上がってみて、もしも立っていられなかったらここに座ったままで鑑賞するよ」とSとJに伝えた。

Aは少し離れたところにいたのだがこちらを気にしてくれていたので、Jが私は大丈夫そうだと伝えてくれた。

暗転したので、意を決して立ち上がった。何にもつかまらず、立っていられそうだった。床の揺れがなくなっていた。自分でもさっきよりは状況は快方に向かっていると思った。
SとJに「立ったまま見られそう」と伝えた。
そして始まった曲がWaves!!!
昼間やってほしい曲と話した曲。おおお、こちらも伏線回収キター!!!
この前奏を聴いたとたんに、ふたたび自分の前のドアが開いてちゃんとステージの前に自分がいることを確認できた。現実界に戻してくれた重要な鍵のようなWavesだった。
地下牢から出されて外に通じる扉を開けて光を浴びたようだった。
今度は安堵と、ここに戻してくれてありがとうTreyという感謝の気持ちで号泣。

だんだんと過剰だった感覚が適度に回復してきて、やっと音量もちょうどよくなってきた。そしてサブリミナルだった現実側の時間が少しずつ長く訪れるようになってきた。
そして自分の周囲でおもいおもいに踊る人たちも視野に入ってきて、自分がいまフロアに立ってショウを見ているんだなと実感できてきた。

Rise/Come Togetherでは、歌詞でTreyがCome Togetherを繰り返すので、「うんうん、一緒になるよ」と相槌をうっていた。
そしてLightに入ったとき唐突に、"たったいま正気に戻りました"という瞬間がきた。自分でわかった。つきものが落ちるというか除霊が終わったというか、身体から邪悪なものが空中に抜け出たような感じ。
思わずJに「ねえ、いま元に戻った。もうあとは大丈夫」と伝えた。Jも「ほんとだ。顔色よくなってるし血の気が戻ってるようにみえるよ。よかった」と言った。

とはいっても、手足の筋肉的なところの金縛りのような状態から抜け出たという状態で、聴覚と視覚はまだまだ過剰な状態だった。
特に視覚は、すべてがホログラム状態でギラギラした虹色のフィルターがかかっていた。びっくりマンチョコの特別なシールがキラキラしていたのだけれど、どこもかしこもあの状態になっている。
聴覚は、音のバランスが整ってまともに聞こえる状態で、どちらかというとそこにさらに研ぎ澄まされたような感覚が追加されて、4人の楽器の音がしっかりと聞き分けられるし、重ね合わせてもよい状態で聞こえてくる、といった感じ。
うまく表現できないけど、音の粒子を丁寧に拾って感じとっているような。

聴覚はほどよくなってきたけれど、視覚はまだまだうっとおしかった。
「ホログラムは私には過剰だよ。こんなにてんこもりじゃなくていいんだよ」と思う。
たぶんこの辺は、独り言で口に出して言ってたんじゃないかと思う。自分では脳内の声なんだけど、どうもしゃべっていたような気がしないでもない。
ただ、大声ではないし、日本語で何か言ってるだけだからまわりは気にならなかったんじゃないかと思うけれど。
で、この"過剰"という言葉から思考がへんな方向にとんだ。
「そうだよ、この過剰さは、まるで豪華海鮮丼じゃないか。」
「ウニ・トロ・あわび・イクラ丼。」「そう、その感じ。」
で、ここから、「ウニ・トロ・あわび・イクラ丼、ウニ・トロ・あわび・イクラ丼」の脳内ループが始まる。うまく合うわけじゃないけど、自分なりにLightとThe Lineあたりのリズムに合わせてこのフレーズがぐるぐるとしていた。

そのうちに視覚に変化が。
ペイジのグランドピアノの上に何か動いているなと思ったら、ウニだった。殻はなくて、中身だけが木箱に並べてあるあの状態のウニ。そのウニが、隊列を組んで、ザッザッとこちらに向かって動いている。「あ、ウニだ。」
ウニはピアノのふちまでくるとぼとぼとと床に落ちていく。後から後からウニがくる。
私はあまりウニが好きではない。「いや、ウニはいらないから。勘弁して」と言う。

すると今度は、マイクがベースの弦をたたくたびに、何かがシュッと飛んできた。
あわびだ。マイクが手裏剣を投げるごとく、ベースを弾きながらあわびをどんどん投げてくる。
あわびはそんなに嫌いじゃないけど、海鮮丼にはトゥーマッチだ。
「やめてー。あわびもいらないよー。」

「私は3万円の豪華海鮮丼なんてオーダーしてないのよ。私が食べたいのは2500円のイクラ丼ー!!」と言った。
その途端「じゃあこれ」と誰かに言われた気がしたのだけど、トレイの頭上から、赤くてきれいなイクラが、ドバーッと滝のように降ってきた。目の前は赤いキラキラでいっぱいになった。
「そうだよ、これだよこれ。」「イクラ丼! あそれイクラ丼!」と、今度はイクラ丼フレーズのループ。

そしてこの時に唐突に思い出したのが前半でSが私を安心させるために何度か口にしていた
「みんな一緒だから」。
「そっかー、いまここで踊ってる人たちもイクラが降ってるのを見てるのかー」と、どうしてそうなった、的な発想に飛躍。

そしてふいに、あ、そうだ。写真を撮っておこうと思い、スマホをとりだした。
私のスマホはiPhone6s。ステージに近いのでカメラを横にして横長の状態でステージ全体を撮ろうとした。しかし、私のスマホは正方形だった。横幅がぐーっと縮んで正方形に見えるのだ。
「うわー、モニター部分ちっちゃ!」と思う。でもとりあえずカメラモードにしてモニターを覗き込んだ。すると、正方形のモニターの中には、ちゃんと横長の現実的なステージが見えていた。
窓の向こう側に現実が見える、という感覚だった。
スマホは正方形だけど、モニターの向こうにある世界にとても安心した。
そして私は視力がよくないし、前半でコンタクトレンズを紛失しているのだけれど、なぜかめちゃくちゃ視力があがっていた。ステージにいるメンバーがくっきり見えるし、写真を撮るときにも、被写体のピントの合い具合がきっちりで、いつも写真を撮る時と全然違った。ズームをかけたりしても、一発でぴしっとピントが合う。
視力はずっとこのままならいいのにと思った。

ステージは、スマホ同様横幅がとても短くなっていてとても小さいステージで演奏しているように感じた。マイクとペイジの距離がやたら近い。
それで「トレイをもう少し近くで見たいな」と思ったら、今度は手前に魚眼的に空間がゆがんで、トレイが出っ張ったバルコニーにいるみたいに、ぐいっと前にでてきた。
「うわー、なんかすごい世界だな。そっかー、思考が密接に影響してるのか。前半抗ったのはよくなかったんだな。こうしてもうされるがままに身を預けたらだんだんこの感覚になれてきたし、理解できてきた。」

そしてWhat's the Use?が始まった。視界のホログラムは消えていた。しかし、今度はクリスクロダの照明がすごいことになっていた。
ハンプトンは完全に宇宙船だった。球体の形の宇宙船に乗っている感じ。音もとぎすまされていた。その世界にはバンドと自分だけしか居ないような感覚になった。
なんというか、完璧な世界だ、と思った。クリス・クロダとPhishの本当の力を思い知った。

「ねえ、トレイ、これを私に体験させるために、あんなにひどくてつらい試練を与えたの?たしかにこれは完璧だし、本当に最高だけれど、それにしたってあんな回り道をさせるのはひどいよ。ここにいる人たちは、この瞬間を味わうためにそれぞれに個人的な大冒険を繰り広げてここにたどりついてるの?
こんな世界を作っているPhishは本当に最高だし大好きだよ。でもあんな冒険はもうごめんだわ。完璧な世界を味わえなくても私はいつも見ていたショウで十分に満足してる。その上の段階があることは今日わかったけれど、もう1回この手順を踏んでここにたどり着くのは無理だな~」

と、自分の中でトレイに話しかけていた。
Possumが始まったときに、私はセカンドセットの大半、海鮮丼とイクラ丼のことを考えていたんだなと思ったら、ものすごく自分のことがバカバカしくておかしくなってきた。「大好きなトレイを見ながら、降り注ぐイクラのことをずっと思ってるなんて、本当にアホすぎる。めっちゃ面白いじゃん私。」
こうなったら、自分で自分に大爆笑してしまった。このモードになったらもうお腹がよじれるくらいの爆笑になってしまった。どうしよう、面白くてたまらない。これを誰かに言いたい。笑いすぎて、涙がでてきた。笑い泣きというやつ。
早くこのバカバカしいストーリーを誰かに言いたいのだが、ショウの最中は無理だ。思わずJの方を振り返って「イクラ丼が。。。」と言い掛けたのだが、もう言ってるそばから笑ってしまうし、とりあえずショウが終わるまで我慢しようと、こんななぞの発言をしたまま、またステージを見た。

アンコールで、大好きなMoreを演奏したのに、「私いま、こんな名曲Moreを聴きながら、ずっと「ショウが終わったあとにこのばかばかしい私の一連を人に話して、「本当にバカだね」と言われるだろうというのを想像していて、本当にすべてがバカ過ぎる」という思考がループしていて、笑い死にそうなくらいに笑っていた。笑いながら泣いていたので、たぶんはたからみたら、名曲に感動しながら喜んでいる状態に見えていただろう。
ってことを考えると、「はたからはそうみえるのに、考えてたのはイクラ丼だよ」と思うとまたおかしくて、本当にむせるくらいに笑った。



そしてこの日は大サービスのダブルアンコールでまたメンバーがでてきてびっくり。
You Enjoy Myselfで盛大に終わっていったのだが、トランポリンが出てきたときに、「なんでこの人たち演奏しながらトランポリン乗ってるの?」と何を今さらな事にまた笑いのツボを刺激されてまた爆笑。





で、トランポリンの動画を撮ったのだけど、撮ったつもりがrecが押されていなくて撮れていなかった。それに気づいて、「ああっ。トランポリン終わっちゃったけど、ここから動画を撮るか」とrecを押したとたん、2順目のトランポリンのくだりが始まって、「私のためにもう1回飛んでくれてるじゃん!」と思ったらそれもまた笑いのツボに入り、何から何まですべてが笑いに変換されてほんとひどかった。






ショウが終わったところで、Jに「前の女の子に最初に吐いたのがけっこうかかって、途中で着替えにいってたよ。謝った方がいいよ」と言われ、「オーバードーズで具合が悪くなってしまって、迷惑をかけてごめんなさい」と謝った。過去にも何度かショウで合っていた彼女は笑顔で許してくれたものの、ショウの最中に他人の嘔吐物がかかるなんて、かなりヒドイ出来事だわ。最低だな私。
他にもいつも会う夫婦(セカンドで踊るスペースを譲って前に出させてくれた)にもお詫びをして、お詫びにならないかもしれないけど、持っていた版画を渡した。

そして心配してくれていたSとJとAにも平謝りをした。ただ、まだ私の笑い上戸は継続しているのであまり神妙な雰囲気では謝れなくて申し訳なかった。
「(私が)倒れず、救急搬送もされず、セカンドに帰還して今ここに無事にいてよかった。ショウも後半だけでも楽しめたのならそれでOKだよ。」とJが言ってくれて、それで本当に救われた。

会場の外に出た途端から、私は誰かに話したくてしょうがなかったここに書いたすべての話をマシンガンのようにまくしたてて話し始めた。
話しながらも、ハンプトンを眺めるのはこれが最後だと思い写真を撮った。


パーキングロットにはごったがえすファンとたくさんの警官がいた。警官は風船売りを片っ端から販売中止にしていた。
そういえばロットでのアルコール販売も初日だけであとは警官によって禁止されていた。
本当にハンプトンの警官の多さはすごくて、今までいった会場でこんな雰囲気はみたことがない。それが人気のないベニューという理由だというのもわかる。

私の友達で、夫婦で海外のフェスに行ったとき、現地で仲良くなった人にもらったクッキーを食べて具合が悪くなり、そのまま会場から救急搬送され、現地で入院となった人がいる。
その話を聞いていたから、私はショウの最中にもらうものは丁重に断って受け取らないようにしてきた。今回は、まがさしたというやつかな。
ファンの人たちは親切で、好意でいろんなものをシェアしてくれるけれど、中身がなんだかよくわからない、口に入れるタイプのものには本当に気をつけましょうね。。。

それにしても最高の、奇跡の完璧な瞬間と、最低の、地下牢に放り込まれたような時間の両方を経験した結果、あの最高はすばらしいけれど、前半のあの辛さがセットでくるのなら、もう体験したくはないなというのが現在の心境。
音源を聞きなおすたびに、この一連の記憶がよみがえるので疲れる(笑)。

PHISH, SUNDAY 10/21/2018
HAMPTON COLISEUM
Hampton, VA
SET 1: Stealing Time From the Faulty Plan, Skin It Back, Brian and Robert, Timber (Jerry The Mule) > Simple, Mexican Cousin, Camel Walk > Back on the Train > Saw It Again

SET 2: Waves -> Rise/Come Together > Light > The Line, Wingsuit > Your Pet Cat, What's the Use? > Possum

ENCORE: More

ENCORE 2: You Enjoy Myself

2 件のコメント:

  1. いやいや、読みながら大爆笑してしまいました(笑)。
    ほんとにお疲れ様でした(笑)。ほんとにおもろい(失礼)。
    「ねぇ、Mexican Cousinだよっ!」って最高でしょ!
    それにしても、その体調で、写真はとても良いですね。

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    1. たけさん
      ほんとに疲れたよ~(笑)。読み返すと自分の思考回路がそもそもヤバイわーと思いました。
      Mexican Cousinはね、ほんとーにすごい怒りを友達にぶつけてしまったよ。オラオラ状態でした。。。
      視力だけは、あの瞬間に戻ってほしいです。写真を撮ると現実が見えて安心するのもあって、立ち直ってからはけっこうな枚数の写真を撮っていました。
      この記事は、笑ってもらってなんぼです。楽しんでもらえてなにより(笑)

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